第3章

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※※※ あんなに高かった日も西に傾き、東の空が夜の闇に染まり始めた5時頃――― バタバタと走ってくる音が近付いてくる 薄暗い校庭に顔を向けると、足音の主は莉子ちゃんだった 東の空の色に負けないほど真っ青な顔で、目が合うなり俺の胸に飛び込んでくる 「えっ!り…莉子ちゃん?!ど…」 『どうしたの?』と出掛かった言葉は、呼吸と同時に喉の奥へと滑り落ちていった 胸の前でギュッと鞄を握り締めている彼女の体は、小刻みに震えている 耳を澄ませば、カチカチと歯が鳴る音も… 「大丈夫?」 彼女の両肩に手を乗せ、耳元で…出来るだけ優しく、囁くように聞いた 「莉子…ちゃん?」 体をガタガタと震わせ、握り締めた鞄に爪が食い込んでいく 子供が『いやいや』するみたいに、ただひたすら頭を振る彼女 「………い」 「え…?」 何かを呟いたみたいだが、何を言っているのか聞こえない
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