第3章

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「…わい………。怖いの………」 怖い? ………何が? そんな野暮なこと、とてもじゃないけど口に出来なかった 「もう…大丈夫だよ。大丈夫だから…」 どうしようか迷ったが、両肩に置いた手を背中と後頭部に回し、ギュッと抱き締める 彼女の体がビクンと跳ねた それと同時に、ドサッという音を立てて、彼女の手から鞄が滑り落ちる 「あ………う…。やだ…よぉ………」 俺のシャツをギュッと握り締めた 彼女の瞳からこぼれ落ちるたくさんの涙が、シャツを濡らしていく 「嫌…嫌………嫌!嫌っ!嫌だっ!うっ………っ。ふ………ううっ…うあああああああっ!」 嗚咽でうまく言葉を発することの出来なかった声が段々荒くなっていき、静かな校庭に彼女の泣き叫ぶ声が響いた その悲痛な声が校舎に反響して、痛ましさをより一層増幅させていく 『大丈夫』 小さい子供にするように、ただひたすら彼女の頭と背中をさすり続けた
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