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「ん―――…。多分…20分ぐらい………だと思う」
「20分?!」
何をそんなに驚くことがあるのか、山神くんの目が見開かれた
「え…」
「そんなにっ…待ってたのかっ?!うっ…え………エホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
『むせた』と目尻に涙を溜め、Tシャツの袖口で口元を押さえ咳き込んでいる
「無理…するからじゃん」
「あっ!笑った!」
苦笑いすると、咳き込みながらも満面の笑みで私を指差す山神くん
私が笑うことが奇跡のように、嬉しそうな顔をしてくれる
「私だって人間だもん。笑う時ぐらいあるよ」
そう言うと、今度は困ったように微笑んだ
「だって………。車道に飛び出してたじゃん」
「………うん」
「あの時、俺が止めなきゃ死んでたよね?」
死ぬ―――
「そう…だね…」
「死のうとしてた莉子ちゃんが、今こうやって俺の前で…。ほんのちょっとだけでも笑ってくれる………。それが嬉しいんだ」
その言葉に、思わずドキッとする
じわりじわりと、体全体に染み込む優しい言葉
私には、広哉が居るのに―――
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