第4章

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「待ってないよ。それに私も―――昨日、随分待たせちゃったし」 話題を逸らせようと、この前の話を引き合いに出す 「え?昨日?昨日は別に、俺が勝手に待ってただけだから。それに…」 何だろう? 「女を待たせるなんて、最低じゃん。男が女を待つのが普通だろ」 腰に両手を当て、真っ赤な顔をしてそっぽを向いた 一生懸命…恥ずかしいの、我慢して言ってくれたんだろうな… そう思ったら、自然と頬が緩む 「それなら、私も…。今日来るか来ないか分からないのに、何か待ってなきゃ…って思って勝手に待ってたの。だから、山神くんは悪くないよ」 「来るよっ!だって、俺―――。あ…れ?俺、ずっと待ってるって言わなかったっけ?」 「うん、昨日だけ」 「うわ―――――っ!俺、ダメダメじゃん!」 ガバッとしゃがみ込み、頭を抱えた 一体、何が『ダメ』なんだろう でも、ま…いっか 「ね。山神くん」 「んー?」 相変わらず頭を抱えたまま、目線だけ私の方を向く この人になら話せるかもしれない たった3回しか会ったことのない、この人に… そう思って、口を開いた
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