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「高梨…、高梨莉子(たかなしりこ)です」
そう言って悲しげに微笑む彼女
高梨莉子―――
もう一度、心の中でそう呟く
「どうして………」
「え?」
「どうして助けてくれたんですか?」
彼女は、恨みがましい顔つきで俺を見ていた
「私………」
ギュッとスカートの裾を握り締め、小刻みに震えている
「私っ―――」
「ゴメン…。ほっとけなかった…」
彼女の言葉を遮って呟いた
「目の前で人を死なすほど、俺は薄情な人間じゃないよ」
納得出来ないという表情をする彼女に、そっと手を伸ばす
「ねぇ…莉子ちゃん。せっかくこの世に生まれたんだ。人生…全うしなきゃ」
彼女の両肩がピクリと動いた
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