第1章

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「世の中には、生きたくても生きられない人も居る…。せっかくの命、無駄にしちゃダメだよ」 「…も………に」 俯いた彼女が何かを呟く 「え?」 「何も―――。何も知らないくせにっ!」 顔を上げた彼女の瞳からは、涙が溢(あふ)れていた 「私の気持ち、何一つ知らないくせに!そんな説教染みたこと、言わないでっ!」 足元に落ちていた鞄を拾い上げ、勢いよく駆け出す 彼女の姿は、あっという間に見えなくなってしまった 他人の目には、街中で大喧嘩したカップルのように映っていたかもしれない 「高梨…莉子………か」 もう一度、名前を呟く ただの人助けだと―――思いたかったんだけどな 人助けだとか…そんな単純なことじゃ済まなくなるなんて この時の俺には、気付いていなかった
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