第1話「噂の名探偵」

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第1話「噂の名探偵」

  「なぁ、『タケさん』って……誰?」  俺は隣に座る女子に尋ねた。学校についてから何度その名前を耳にしたか分からない。どこの教室でもその話で持ち切りだったんだ。 「えっ、黒井くんもしかして知らないの!?」  驚きを隠せない様子だ。ということは、やっぱりその『タケさん』とやらは有名人か?知っておかないとダメってか。 「バカヤロー!!」  思った途端にどこからともなく体当たりを食らい、うげっと変な声を発して俺は前のめりに傾いた。 「いっ……!てェな何しやが」 「知っておかないとダメだ!そのままだと人生の2分の1は損するぞシュウ!」  人の体の上で偉そうに語るそいつの正体は、もう分かっている。緒方創太(オガタソウタ)だ。毎度のちょっかいには慣れた。いや、慣れてしまった。 「いいか?『タケさん』ってぇのはな、最近口コミで有名になってきてる名探て」 「いいから離れろ!」  俺に全体重を預けている緒方をひっぱたき、肝心な部分を聞き逃した。
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