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力ずくで緒方を引き離し、鞄からペットボトルを取り出して口をつける。梅雨のジメジメした季節も終わった。初夏の乾燥した空気とこのバカ(緒方)のせいで、少し喋っただけでも喉が渇く。冷たすぎない麦茶の浸透が気持ちいい。
「ったく重いんだよお前……で何だっけ?名……」
「名・探・偵!」
「ゲホッ」
漫画みたいに勢いよく口から麦茶を噴射、しそうになったがギリギリで防いだ。
名探偵だって?それこそ漫画でしか聞いたことがない。
「噂は噂だろ?ガセだって」
「いやマジマジ!松林駅の近くに越して来たらしいんだよ!知らないなんてお前ぐらいだぜっへっへっへ」
緒方はその事実によほど興奮してるのか、頭の中身だけでなく笑い方までおかしくなっている。
「推理モノ好きとしてこんなに面白い話はねぇだろ?な、ちょっと行ってみようぜ今日」
「松林の方って割りと田舎じゃん。そんな所に探偵事務所でも構えてんのか?」
「どうなんだろ?行けば分かんじゃね。いやきっと分かる。行こうよシュウくん」
とりあえず、緒方に一人で行く度胸がないことは分かった。
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