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こう見えて――って、どっからどう見てもチキンだよお前とか、そもそもなんで俺だけ置いて行くんだとか、言いたいことが頭の中で渦を巻く。くしゃみ不発の心境だ。
俺はしばらく呆然としていたが、中からバタバタと足音の響く音がして我に返った。
いや、喚いても仕方がない、かと言って今さら逃げるわけにもいかない。どう対応しようか……。
「どちら様ですか?」
「!!」
ドアの隙間から顔が半分だけ出ているのを見て一気に背筋が伸びた。おそらくタケさんだと思われる男が一人、俺をまじまじと見つめている。
「あ、俺、その……探偵の方が近くに越してきたって聞いたもので……」
(うぅ……恥ずかしすぎる)
自分を不審者扱いしている自分がいた。
タケさん(だと思われる人物)がさっきより広めにドアを開け、容姿が明らかになる。大学生ほど若くは見えない。TシャツにGパンという非常にラフな格好だ。特徴といえばタレ目だろうか。
「まぁ、暑いでしょうから中へどうぞ」
言われるがままに玄関に入ってしまった。そしてタケさんは、俺に向き直って言ったんだ。
「どうやってこの家の場所を知りました?」
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