死神と教惶

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教惶の登場で前列に座っている人間は すでに頭を上げて祈りをささげている。 「みなさん、ようこそ。 今日を無事に生きていられることに感謝しましょう。」 「はい。」 「……みなさん、危機を感じるようになりましたか? 心を研ぎすぎませることで危機回避はできます。 特に現代社会は心の無いものが多い。 人類は進化をしてきた。 脳、言語、そういったものが進化の証とされていますが 心もその一つ。 進化の頂点に立つ人間に与えられた力。 じゃあ、心は何に役立つか? それは正しい判断です。 皆さんも感じるはず。 同じ道、同じことしても なぜか嫌な感じがする。 なぜか失敗すると思える。 今日はうまく行く気がする。 それは心の力です。 人間同士では心と心がぶつかるので 簡単に成功できませんが 人間以外のものには役立つ。 それが私の予言でもあるんです。 心磨き上げた人間。 そう、また予言します 2日後中央銀行の前の通りにはいかないでください!」 会場はざわついている。 教惶は奥にあるカメラを見た。 《…ふふ、マスコミがここに入っているが そんなことは関係ない。》 「すみません、そんな気は私はしないんですが。」 教惶から遠い一人が手を上げた。 「では…行くといい。」 教惶は笑った。 そして一番近くの女性に声をかけた。 「あなたは行きたいですか?」 「い…いえ。」 「なぜですか?」 「あなたが…行くなと言ったから。」 「では、隣の彼が言ったら行くんですか?」 「い…いや。」 「君は熱心に私の話を聞き続けているね。」 「は、はい。」 「今、感じている嫌な予感は心が磨かれている証拠だ。」 教惶は微笑むと女性は輝いた目で教惶を見た。
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