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教惶の講演会場まで彼女が向かうには少し距離がある。
電車で15分、更に普段利用しないバスを使って20分。
金銭的も時間的にも学生にはあまり優しくない。
しかし彼女はそんな講演に向かうのだ。
入り口で名簿に名前を書いて入り
自由に座れる席のなるべく前の席を選んで座る。
今日の講演は1時間30分だ。
「…いいですか?みなさん。
私の予言は特殊能力でない。
セオリマ教も宗教ではない。
人としてあるべき力を、本来持っていた力を
呼び起こしている。それだけなことを忘れないでください。
そして、もう感じている人は感じるだろう。
4日後に遠く、○○地方銀行でいやな予感がする。
個人情報は大切に。
世界が私達の様に心磨かれていればいいのだが…。」
講演終了の教惶の言葉にざわめきが。
「…そういえばその銀行、倒産が叫ばれているんだ。」
「そう私も嫌な感じはしてたの。」
こんな声に教惶はうなずく。
「そう…予知でなく、その感覚が、心が大切なのだ。
心を磨くのは宗教の様にあれこれをする必要は無い。
なぜならその人が持っているからだ。
もちろん、喧嘩や攻撃、時には殺傷もあるだろう。
しかし、それと“嫌な予感”は違う。
喧嘩は心のぶつかり合い。
嫌な予感は心の能力だらかな。」
「はは~。」
セオリマ教信者はうなずいて、
真剣に教惶とパンフレットと交互に見るのだった。
講演が終わり人が去っていく。
彼女はなるべく残っていた。
《…教惶さん……
私は…こんな顔で…
こんな自分が嫌い。
でも心がしっかりしていればいいって言ってくれる。
…あなたを見ているほうが安心する…。》
すると彼女の熱い視線を教惶は感じ取って
ゆっくりと座っている彼女に近づいた。
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