死神と信者達

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「君は…随分と私の講演を聞いてくれているね。」 「…は、はい。」 「…君は…何か悩んでいるね? そんな“予感”するだ。」 「…実は…まあ。」 《うわああぁ…ど、どうしよう! 教惶様が見ている!!》 「…話してくれないかな?」 「えっ…。」 教惶はうつむく彼女よりも下から見た。 「…まあ、何かできればと思うんだが。」 「そ、そんな!…私はただ…その… 少し学校が…。」 「…学校……。」 教惶は腕を組んで考える。 「…そうか…先生や友人に気に食わない人がいるのかな?」 「は!はい!!でも…私が…不細工とか… 人と話すことも苦手で…。」 「…本当にそうかな?」 「?」 教惶は天上を見て彼女と視線を合わせずに話し続けた。 「…もし、本当に自分だけに責任を感じているなら 気に食わない人がいるという表現はおかしい。 きっと君は誰かに気に食わない何かがある。 でもそれは社会的に悪いこととは言い切れず その想いを自分の責任に転化している。 確かに…美しいことはすばらしいことだ。 しかし、近年は機械化、メディア化により 手に届かないような美しいことが広がりすぎて その美しさばかり手を伸ばし 本来人間のもつ大切なことを忘れ去られている。」 「…。」 教惶は視線を下ろすと彼女は見とれている。 しっかりと教惶の話を聞いてきた。 教惶は少し口角を上げた。 「…そういことを思い出させるための セオリマ教だ。 できることはこうやって人の心を呼び覚ますこと。 そしてもう一つ…。」 教惶は一旦言葉を停めた。 「?」 「心のぶつかり合いが悪いことでないことを示すことだ。 今の間違った基準にしっかりと 戦える強い心を誇示できる人がいれば… きっとこんな辛さは減っていくだろうな…。」 「…間違った基準に… 戦える強い心…。」 彼女が何度もうなずいていることを見て 教惶は一人笑っていた。
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