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「おはよう、二人とも。やっぱり早いね。早起きはいいよ、三文の得だ」
運動しているだけあって、朝には強いらしい。顔も晴れやかでまだ瞼が重そうなレンとは大違いだった。
「残念だけどね、ゼンギ。三文のご利益はあたしにはなかったわ」
「ん? なんか元気ないみたいだね、ユユ」
どうしたの? とレンに訊く。レンはユユと売り切れになった魔導紙コーナーを交互に見て、「そういうことだ」
「あーー、なるほど。レンのせいで買えなかったんだね」
「なんで僕のせいだと? まあ、その通りなんだけどさ」
「安心してよ、ユユ。こんなこともあるかと思って」
ガサガサを紙袋を漁る。まさかーー
「ほら、水の魔導紙、1、2、3 mmを10枚ずつ買っておいたんだ」
「きゃーーーー!! さすがゼンギ、どこかのレンとは違うわ!!」
どこかのレンって、一人しかいなくないか? そう思ったが、言わないで笑っておく。
ユユはゼンギの首に抱きつきお礼を言っていた。ユユのいつも通りのスキンシップだったが、女性に耐性のないゼンギは顔を真っ赤にしてあたふたしている。助けてもいいが、ここはゼンギにもう少しいい思いをさせてやろう。レンは黙って奥へと進んだ。
水の魔導紙、火の魔導紙、光の魔導紙。いくつかの魔導紙コーナーを通り向け、さらに奥へと進んだところに、レンが望む魔導紙がある。
壁の魔導紙。そのコーナー。
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