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「おーー、流石に残ってる残ってる。と言うか、売れてないんじゃないか、これ」
水はもちろんのこと、火も光も、そしてほかの魔導紙も人気の1mmはほぼ売り切れだった。それがこれはどうだろう。1mmが丸々残っている。バラバラになっていないところをみると、誰も手をつけていないのではないだろうか。
「まあ、人気不人気で選んだわけじゃないけどさ」
それでも、やはりレン以外選択者がいないとなると少し寂しい。試験のときや普段の会話でも、同じ話をできる人がいないのだ。自ら選んだとはいえ、後悔がないといえば嘘になる。
「えっと、まずは」
今日は1mmを10枚、そして2、3、5mmを5枚ずつ購入する予定だ。と思ったが、今日は思い切って1cmにも手を出してみようか。そんなことを思いながら、魔導紙を物色。汚れた綺麗だで性能に違いなどでないが、それでも綺麗なのを手に取る。レジに向かおうとしたとき、ポンと肩を叩かれた。
ゼンギだった。
「おう、ユユから解放されたか」
「ん……朝から疲れたよ」
ただ異性に抱きつかれただけだというのに、ゼンギは全力疾走を終えたあとのようになっている。朝からこんな体力を消耗して、今日一日持つのだろうか。
「レンはお目当てのものはあったの?」
「十分過ぎるぐらいにな。というか、壁の魔導紙なんかいつでも余ってるんだから、わざわざ朝から並ぶ必要もないんだけど」
「確かに。ああ、でも早くレジに行かないとマズイよ。予鈴が鳴っちゃう」
「え? もうそんな時間か? ヤバッ早くしないと」
合計25枚の魔導紙を手に、レジに走る。
魔導紙を片手に一喜一憂、右往左往する。それはリクセート学園では毎月見られる光景だった。
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