再会

2/27
前へ
/365ページ
次へ
トントントンと規則正しい音がする。 その音は、まるで「まな、こっちだよ」とでも言っているかのように、私を暗い闇の中から明るい場所へと引き戻してくれる。 意識が現実へと引き戻されつつある中、鼻を掠めるのはフワッと香るカツオだしの匂い。 ギュルギュル―っとお腹が鳴って寝が覚めた。 「はぁー、まただ……」 涙はとっくに乾いているのに、頬は冷たくなっていた。 時々見るその夢が、私の心の中にある何かを示しているのだろうか。 だけど、どんなに記憶を辿って行っても、私の中にそんな場面が無かった。 「愛(まな)!そろそろ起きなさい」 廊下でおばあちゃんが呼んでいる。 その声だけでさっきまでの不安なんてパッと吹き飛んでしまう。
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

526人が本棚に入れています
本棚に追加