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トントントンと規則正しい音がする。
その音は、まるで「まな、こっちだよ」とでも言っているかのように、私を暗い闇の中から明るい場所へと引き戻してくれる。
意識が現実へと引き戻されつつある中、鼻を掠めるのはフワッと香るカツオだしの匂い。
ギュルギュル―っとお腹が鳴って寝が覚めた。
「はぁー、まただ……」
涙はとっくに乾いているのに、頬は冷たくなっていた。
時々見るその夢が、私の心の中にある何かを示しているのだろうか。
だけど、どんなに記憶を辿って行っても、私の中にそんな場面が無かった。
「愛(まな)!そろそろ起きなさい」
廊下でおばあちゃんが呼んでいる。
その声だけでさっきまでの不安なんてパッと吹き飛んでしまう。
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