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     蝋燭を消して、店員たちが出て行った後も  由紀はぼんやりケーキを見ていた。  突然、出過ぎた真似だったかも、と遠藤は不安になった。 「・・・・・不愉快でした?」  いや、と由紀はパッと顔を上げ、慌てた様子で首を横に振る。 「ありがとう。  ・・・うん、嬉しいよ。  ただ、バレてるとおもってなかったもんだから・・・」  フッと遠藤はホッとしたのもあり、笑みがこぼれる。 「バレちゃまずいんですか?  ほんと、可笑しい・・・」  由紀も遠藤につられるように笑顔になる。  そして、ケーキをじっとまた見つめた。  その表情はなんとも言えない。  懐かしさ、なのか、喜び、なのか、痛み、なのか・・・  それでも、遠藤が今まで一度も見たことのない表情。  それだけで、心が震える。  由紀の表情を、由紀が、もっと、もっと知りたい。
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