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そう思わせる程、彼はこの伯母の事を苦手としていたし、わざわざ彼女が出向いてくるような事を仕出かした覚えも、彼の中に無くはなかった。
そして彼の予想通り、伯母は世間話などはせずに、単刀直入のその事を問い質してきた。
「さて、今日私がここへ来た理由は解っているんだろうね?」
「ほ、法事の話かな…」
「相変わらずだね、あんたは」
「…少しは変わったと思うけど」
「あんたがすっとぼけるつもりなら、こちらから話させてもらうよ。…あんた、この前の土曜日の晩、ウチの孫の亜由美をどこに連れ出したんだい?」
「…ダム近くの…自然…公園…」
「ただの、じゃないだろう?それにもう一カ所、ロクでもない連中の溜まり場になっている廃墟にも行っただろ。何考えてんだいあんたは」
「でも、行ってみたいって言い出したのはあいつで…」
「黙りな!」
静かに語っていた伯母は、言い訳しようとする柏木を一喝する。
「それに、あんたが付き添って護るって話だったのを、行かなかったそうじゃないか」
「それはちょっと事情が…」
「あんたの不徳が原因なんじゃないのかい?」
「いや…う…ん…」
不徳と言われるような覚えが、無いと言い切れない柏木は、完全な否定も出来なければ素直に認める事もできないでいる。
「…ホント、あれから随分と時間が過ぎたってのに、何も変わっちゃいない」
「…結構変わってるつもりだけど」
「変えなきゃいけない所を変えてなきゃ、変わったとは言えないんだよ」
そう言って大きな溜息を一つ吐いた伯母は、不肖の甥…かつての弟子の顔を見た。
彼の伯母こと村角雪恵は強い霊能力を持つ人間が生まれる家系で、その力を受け継いだ彼女は霊媒師になっている。
ただし、血筋だからと言って、その家系の人間全てが力がある訳ではなく、彼女の血族でその力が備わっているのは母親(柏木からは祖母)と弟(柏木からは叔父)の計三名。中でも伯母は、その力が特に優秀だ。
そして、今から26年前、力を持っていなかった彼女の妹(柏木の母)の子供…柏木弘人が力を持って生まれ、物心がつく頃には彼女の弟子として扱われる事になる。
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