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ただ、彼等の血族が諸々の霊を払う力の根源は、功徳を重ね、天上界で修行を積んで自らを高めて力を持ったご先祖様の守護霊に依るモノだ。彼等はそれを上手く操り、正しい事に力を使い、正しい心で功徳を積んでいかなくてはならない。
優れた猟犬は飼い主を選ぶ。とも言うが、それと通ずるモノがあって、守護霊も護るべき人間を選ぶ。つまり、力を持った者は常に試され る立場にあるという事だ。
その事を肝に銘じていたハズの柏木は、力がメキメキと上達していた十五・六の頃、力のない人達の事を見下し、選ばれた人間という事を履き違えて考えるようになってしまっていた。
伯母もその時に何度も彼を聡そうとしたが、彼は一切考えを改める事はなかった。
そして、彼は守護霊に見限られ、力を失ってしまう事になる。
現在の彼の守護霊は、かつての守護霊のような力は授けてはくれない。
彼に残されたのは、霊を見る事が出来るだけの、僅かばかりの力だけだ。
「…この間の事はもういい、あんたの友人達がよくしてくれたからか、あの子には何事も無かったからね」
そう言うと伯母は、腕組みをして厳しい目付きで、かつての師弟関係を思い起こすような何かを聡そうとする言葉で話を続ける。
「昔のように修行に入れとまでは言わないが、せめて考えを改めな。あんたにかつての力はもうない、チョイと見えてるってだけで他人を見下したって、虚しいだけだろ?もう少し慈悲の心ってモノを持ちな。事と場合によっちゃ、また力が戻るかもしれないんだよ?」
柏木はその言葉には答えず、かつての師匠の目を直視する。
数分、沈黙がこの部屋を支配した後、伯母は徐に立ち上がった。
「…これは、私だけの言葉じゃない、あんたの今の守護霊の言葉でもあるんだ。よ~く考えるんだよ」
そう言い残し、伯母は帰っていった。
帰る伯母を玄関まで見送った柏木は、一人自室に戻って服を脱ぎ始めると、身体を洗おうと素っ裸になって浴室へと入っていく。
そしてシャワーを浴びながら、誰に聞かせるというでもなく呟いた。
「…伯母さん…俺はあの時…力が失われたあの時…心の底から『清々した』って思ったんだよ…」
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