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数日後…
この日、柏木は心突隊のスポット巡りに参加していた。
今日の参加者は、真光・椿原・結城・直哉と柏木の計五名。
竹中と柊はテスト期間に入ったらしく、塾に通わずとも一定の成績をキープ出来ている彼等も、何の準備もなしにテストに臨むほど無謀な事はしないという事だろう。
では、同じ高校生の直哉はなぜ参加しているのか?学校が違うとはいえ、大体似たような時期にスケジュールは被って来るモノ、彼の通う学校もテストが近いはずだ。
「来る日も来る日も机に向かってたら、ショートして頭から煙が出てくる」
という言い訳の元、テスト前だというのに参加したという、なんとも無謀な行動に出ていたのだ。
実の姉である恵利那は、弟のこんな行動を何と言っているのか?
今この時間、彼女はコンビニでアルバイト中、それが終われば大学の仲間と飲みに行く約束をしている、まさかスポット巡りに参加しているなど…かわいい弟は自宅で勉強中だと思っているので、意見を訊く以前の問題だ。
「エリが真実を知ったら何と言うかな?」
今日のスポット巡りを終えた帰りの車中、日付が変わったばかりの夜道を眺めながら車を運転する椿原は、デジカメに何か映らなかったを確認しながら、柏木と話し込んでいる直哉に呼び掛けた。
「…え?姉貴が何か?」
柏木と話しながら、釣果のほとんどないデータを確認しながら消去していた直哉は、不意に呼び掛けられて聞き直す。
「いや、テストが近いというのに、全然テスト勉強しないお前の事を、エリが知ったら何と言うだろうなっ て」
「ああ…でも、普段から予習復習はしてるし、問題になるような成績でもないし、家に帰ればしっかりしてるから、今日一日ぐらいは息抜きって事で大丈夫っしょ」
「…あんまり、こういうのを息抜きにするのはどうかと思うぞ」
先週、瀬戸浦の話を聞かされている結城は、そういう考えには賛同しかねるといった意見を、横に座る直哉に向かってポツリと呟く。
「う~ん…まあ…言いたい事は解るんですよ…いつまでもやってる訳にもいかないですからねぇ…その内止めるつもりですよ、その内」
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