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とばっちりを全身で浴びてしまった真光は、つい先程目の当たりにした彼女の剣幕を思い出しながら呟く。
「あれは…恋人と言うよりは、女房って感じだな」
「…てことは、あの人の尻に敷かれるんですかね?トシさん」
当人がいれば全力で否定しそうな事を言う二人、しかし傍から見ていればそう見えなくもないのも事実だが。
「しかし…彼女のあの目は…」
運転席から真光越しにみていた椿原は、どこか自虐的に笑いながらそう言って真光の顔をチラリと見た。
「ああ、完全に悪者扱いだな」
もう少しソフトな喩え方をすれば、真面目な青年を非行に誘う不良と言った所だろう。
「そう見えても仕方ないよな」
言いながら後ろで柏木が笑う。
「…俺は、友人の身を案じて、不本意ながら同行している立場なんだけどな」
茜からの批難の矢面に立たされていた真光は、そう愚痴ともとれるような言葉を、心突隊の創立者であり中心人物である幼馴染みに投げかけた。
それを椿原は、鼻歌を歌って誤魔化す。
「そうは言うけど、あんたも結構楽しんでいるように見えるが?」
ニヤニヤと笑いながらそう言った柏木を、真光はいつになく真剣な眼差しで見据えて来る。
「そういうお前はどうなんだ?」
「…?…どうって?」
「前回同行した中学生の事だ。あの三人の内の誰かが、お前の親族の人間だったのだろう?いくら身内だからと言って、中学生を同行させようとは…しかも付き添いのお前がドタキャンするとは、無責任過ぎだぞ?」
「だから…悪かったって。あの日急に付き合ってる彼女が押しかけてきて、心突隊の事を説明しても浮気だと疑ってどうにも出来なかったんだよ」
年上だろうが容赦しない、真光の刺すような鋭い眼光に威圧され、柏木は冷や汗を流しながら弁明した。
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