13 来訪者

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 作戦の指針を決めたはいいが、普段言い慣れていない厭味を、どのタイミングでカマそうかと考える暇もないまま、どういう相手が来るのだろうかと、内心ドキドキしながら玄関へと向かう。 「こんな夜分遅くにどうも」  と、極めて不機嫌そうに、ぶっきらぼうに言いながら扉を開くと… 「本当に、こんな時間に申し訳ないです」  と、目の前で腰を90度に曲げて頭を下げている男の口から、どこかで聞いた事のある声がした。 「…あれ?」 「…え?…ええ!?」  頭を上げ、驚いた声を上げたまま目の前で固まっている男は、竹中が心突隊に最初に参加した時に、一緒にスポットを巡った柏木弘人だった。 「ヒ、ヒロさん?」 「た、確か…真光が面倒を見てる…そうなのか?」  出ない言葉を引き出そうとしていた竹中は、次の瞬間言葉にならない言葉を上げた。 「うわあっ」  素早くポケットに入れていたお清めの塩を柏木に叩き付け、もう一袋の塩を彼の背後に立っていた白いワンピースの女に叩き付ける。  そして柏木の襟首を掴んで強引に玄関に引き込んで、素早く扉を閉じた。 「ヒロさん、何変なの連れて来ちゃってるんですか!」 「あぁ…そうか、あいつの言っていた霊感の強い弟ってのは…」 「…とにかく、中で話を聞きます」  竹中は自宅に盛塩を使った簡単な結界を張っている。ただ、簡易な結界だから強い霊には効かないし、弱い霊はザルを抜けるように侵入される。しかし無いよりはマシで、現に柏木が連れてきてしまった女の霊は、結界に阻まれて中に入れないでいた。  ベランダ側に回り込んで、カーテン越しに中を恨めしそうに覗う霊を尻目に、竹中は柏木に話す。 「あれ…もしかしたら、かなり厄介ですよ」 「そうなのか?」 「僕の予想なんですけど…多分、恋してますね」 「恋?…誰に?」  柏木はそう訊くが、その顔はほぼ答えは想像出来ているようだ。そして竹中は、それを確信させる為に非情な通告をする。 「ヒロさんに、ですよ」 「…マジかよ」  ソファにもたれながら天を仰ぎ、額に右手を当てて『勘弁してくれ』と言わんばかりにヘナヘナと脱力していく柏木。 「まぁ、明日になったら伯母さんが来てくれる事になってるから、何とかなるが…」 「伯母さん?」
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