14 恩寵

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「ん…え?ちょっと待ってくれ」  目の前の三人と話をしていた竹中は、とある事に気付いて窓の外の風景を見る。 「あれ?美星ヶ原は…」  美星ヶ原とは彼等が通う星ヶ崎学園の最寄り駅の名前である。彼女達が言った行動を考えれば、学校に用事があってその帰りな訳だから、当然その駅は… 「私達その駅から乗って来てるんだから、通り過ぎてるに決まってるわよ」 「嘘!マジで?」  と立ち上がったが、そんな彼を嘲笑うように車窓からは、一つ隣の駅の犬里駅のホームがゆっくりと流れていた。 「…あちゃ…」  学園に立ち寄るつもりだった竹中は、考え事をしていて乗り過ごしてしまった事に気付き、そのまま力なく先程まで座っていた席に腰を下ろした。 「美星ヶ原で下りるつもりだったの?」  言葉無く、項垂れたまま首を縦に振る。 「…下りないの?もう隣の駅に着いちゃったけど」 「いや、いい。一旦家に戻る」  常連にしているカメラ屋近くの坂ヶ野駅は自宅最寄りの城東北駅から七つ先で、美星ヶ原駅はその途中の五つ先にある。だからこのまま乗っていれば城東北に戻る事になるので、そのまま自宅に帰ることが出来る。 「本当は、部室にレンズを取りに行きたかったんだけど、家に帰ってカメラを持ってくる事にした」 「ふ~ん…」  あまり細かい事を知らない三人は、適当な返事を返した。 「元々、出掛ける時にカメラを持ってくるのを忘れたのが…」  愚痴ともつかないような事を、誰に聞かせるでもなく呟いていると、不意に聞き覚えのある声が竹中の名前を呼んだ。 「あ、竹中君、丁度よかった」
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