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視線を空から落としてお洒落な服の飾られているウインドウに写る自分を見ると、それはもう無残な姿となっていた。
髪は伸びたい放題、化粧は乱雑で、目の下には隠しきれないほどくっきりとした隈が姿を表していた。
私が男だったら絶対に付き合いたくはない。
そうか結婚するという手もあったが、それも自分では無理だと先ほど思ったばかりではないか。
そうなればもう選択肢は一つではなかろうか。
「死のう……」
そうと決まれば私の行動は早かった。
家に帰りサイフと通帳とそれから携帯を小さなバックに入れ、コンビニをはしごして貯金していた全額を引き出した。
大体50万くらい。
お金が人の価値を決めるのだとすれば私の価値は50万だったと言うことか。
それから美容院で髪を綺麗に切ってもらって、お洒落な服や靴を買ってその場で着替えた。
久々にしたショッピングは楽しいはずなのに死装束を選んでいるのだと思うと一気に味気なくなったが、最期くらい綺麗でありたい。
そして適当なタクシーに乗る。
ドアが開き、座席に乗ると中年の男性がチラリとバックミラーで気だるげに私を確認する。
「どちらまで?」
その言葉にあ…と間の抜けた声が出た。そうだ、どこか言わなければ運転手も困ってしまう。
すこしの間思い付かなかったが、いつの間にか言葉は私の口からすんなりと出ていた。
「人がいない所に……」
「はぁ、具体的には?」
「本当にどこでも良いんです。
遠くても、お金がかかっても、人がいなければどこでも」
人間関係とは無縁の無人島にでもつけばいい。
そしてそこで私は静かに死ぬのだ。
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