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浴槽 ぬるま湯 ナイフ (服を着るか着ないか非常に悩む。 悩むくらいならとりあえず着ておく。) あとは手首を深めに切ってちゃぽんとつかってればいい。 すきだったのにな。 なんでわたしじゃ駄目だったんだろう。 あんなに笑ってたし、いつも空がきれいで、なーんだ、じゃあずっとこのまま永遠に続けばそんな人生もいいんじゃないかな、深く考えなくっても、と思っていた。 たとえ駄目になっちゃっても、それも運命とか。 温かさに守られていて、美しいものの中で醜いことを考える自由があった。 けれどいざ駄目になったらぜんぜん違う。 ちょっと思い出すと、最もいい場面の最もニコニコした顔が浮かんできて泣いてしまう。 記憶ばっかり近くてすぐ拾えるのに、そんな場所が無いみたいに遠くて、その記憶がすてきであればあるほどきらきら光って悲しかった。 思い出の懐かしい感じがほわっとなるのに、あ、でももう駄目なんだ、終わったんだ、って思ったら内臓がうずくみたいにかーっと熱くなって髪の毛を全部むしり取ってしまいたいくらい苦しくなった。 人がいなくなるって、どういうことだろう。 もう会えなくなる 触れなくなる 体がなくなる 何が救いになるだろう。 時間か 鈍さか 新しいことか どれもしっくりこないのは自分だけがひとりポツンとまだここにいるからだ。
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