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つらいなあ、
悲しみがぱんぱんでどこへもいけない。
ナイフを片手にいつまでも迷って、そのうち時間がたちすぎてナイフを落として、拾って、また迷って‥
途中で寒くなってお風呂につかったら、もう一生このままでいい、死ぬまで動けない、絶対に歩きだせない、そう思った。
けれどしばらくしてわたしの体は、のぼせてあついということに気づいたのか、のろのろ立ちあがり勝手に湯船から出ていった。
落としたナイフが、湯船の底をひらひら泳いでいく。
先週の火曜日か水曜日に8年付きあった彼と別れた。
火曜日はポストを見なかったから、火曜か水曜かわからないけれど、彼が来て手紙をポストに入れていったのだ。
彼との関係に別れの出来事があったなんて、わたしはちっとも知ろうとしない。
少しずつ押しこんでも、すぐ戻されて飲み込んでくれない。
そうこうしているうちに彼が毎週泊まりにきていた金曜日になって、もう二度と来ることはないのに、同じテレビ番組を見て、同じスーパーで同じような材料を買って同じようなものを作ってひとりで食べた。
同じパジャマをきてひとりで布団にはいった。
ふたりで予約した映画のDVDが今ごろ届いて、それをからっぽの心で見ていたら、予約したときの楽しい雰囲気が亡霊のように立ちのぼってきた。
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