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「沢木…これからは純一に仕えてやってくれるか?」
老人は刺すような視線を向けてそう告げた。
とてもあと僅かな時間しか持っていない、医療用のチューブに繋がれた者の視線だとは思えない。
「承知致しました」
唯一残された血縁。彼にとって純一は特別な存在だった。息子夫婦が亡くなった今、彼の遺こす物を引継ぐのは純一しかいない。
若干、二十歳の若さで天文学的な財産を受継ぐ男。
けれどもその天文学的な資産の半分は、彼が作ったものなのだ。
時々、彼と話していると全てを見透かされている気分になる。
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