姫若子

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「元親様。」 戸から誰かの声。 元親の聞き覚えのある声で元親は笑顔を溢す。 「重俊! 実家に行ったんじゃなかったのですね。」 元親はそう言いながら戸を開ける。 重俊は頭をかきながら、 「それが生憎の天候で断念したんですよ。」 そして元親の部屋に入っていく。 元親は重俊が大好きだった。 幼い頃から面倒をみてもらっているのもあり、実の父よりも慕っているほどだった。 「重俊。寂しかったよ。」 もう齢十を超えているというのに、元親は重俊に抱っこを要求する。 重俊はいつもなら、 もう、元服なさった立派な男子なのですから、抱っこなど要求してはなりませぬ、 と断るのだが、この日は違った。 寂しい思いをさせてしまった償いだろうか? 潔く元親を抱っこする。 元親は久しぶりの抱っこだったので笑みを浮かべる。 「ありがと。」
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