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不意に重俊の顔が近くなる。
そして、
「人は接吻を交わすと、優しくなれると聞きます。元親様の命令とあらば、是非接吻をさせて頂きたい。」
元親は、
「確かに。そういう言葉、聞いたことあるよ。重俊! 私に接吻して誓って。これからも私に優しくしてくれるって。」
重俊は頷く。
「分かりました。」
そして静かに元親に唇を落とす。
その瞬間、
「ぎゃああああああ! 」
元親が悲鳴をあげる。
元親は身体が痙攣し出す。
嘘だ。
元親は信じられなかった。
そこにいたはずの重俊が綺麗な女になっていたからだ。
「あははははは。一国の主の跡取りを食っちまったよ。これで長宗我部も……!」
女は興奮を隠せない様子だ。
「坊や。おめでとう。貴方は今日から狂鬼の仲間よ。」
狂鬼……?
きょうき……?
あの狂鬼になるの……?
遠のいていく意識の中、元親は思う。
これで良かったのだと。
武士にならねばならぬのに、武士を忌み嫌い、皆の悩みの種となっていた自分。
その自分がいなくなれば、皆嬉しいだろう。
まだこれは嫌な夢だという気はしたけど、外の嵐の音がこれは現実だと嫌という程教えてくれていた。
「父上……。」
そう呟き、元親は眠りに入ってしまった。
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