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「まあいいよ、一人じゃ喋りかけられないだろうしね」
事実、本人のいないところですら名前を言うのが一瞬はばかられた。
「そっか……まだ、好きなんだっけ?楓のこと」
「うっ……どうだろうね、ハハハ」
「好きなんだ」
痛いところをつかれたなあ。
「いや、好きっていうか、なんだろう? 好きな人が出来ないとか恋愛をしたいとあんまり思わない原因、かな。うん、そんな感じ」
まあでも結局それは好きだって言ってるようなものだけど。
それからしばらく、二分くらいかな、歩いた。
どうしよう、なずなが黙り込んだ。僕何か悪いこと言ったかな。
喋らなくても歩いてるからいいんだけど、さすがに気まずい。
「まあそうだよね! 昔から梗介は楓が好きだったもんなぁ」
「えっ、あー昔はね」
急に喋り出すからびっくりしたよ。
「覚えてる? 最後の冬の日バレンタパーティ」
「そんな十年くらい前のこと……」
まあ、覚えてるけど。
五歳のころバレンタインの前の日かな、十二年も前か。僕が楓にチョコを貰って号泣したことを言ってるんだろうなあ。
そしてその次の年のパーティは楓が旅行で開催されず、その次の年はバレンタインがくる前に楓が引越したから結局、五歳のころが最後だった。
「あの日の梗介ったら楓にチョコもらって号泣しちゃってさー、私や義野とお母さん達もいたのにね」
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