プロローグ

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桔梗の花、キキョウ、それは僕が一番好きな花だ。 とは言っても、僕は花についてすごく詳しいわけではないし、ましてや数百ページにも及ぶ脳内植物図鑑があるというわけでも当然ない。 大体僕は花には関心はあまりない。 よって僕が知っているのは有名な、それこそ向日葵や薔薇、たんぽぽとか、その程度かな。 花については乏しい僕の知識。脳内植物図鑑なんてものがあるとすれば十数ページほどのだ。 その中のでも桔梗のページには栞が挟まれてあり、そのページだけ開き過ぎて跡が残り開きやすくなっている、その程度にお気に入りの花だ。 その日も図書室に行っては図鑑の桔梗のページを眺め、放課後、園芸部の花壇に行っては桔梗を眺めていた。 ちなみに僕は園芸部だ。 桔梗を好きな理由としては綺麗だから、の一言に尽きる。 さて、僕は園芸部に所属していると言ったけど、園芸部の活動としては、各自の好きな花を自分の花壇に植えて育てるだけという、至ってシンプルでお気楽なものだ。 特に育てる花も少なくなる季節、まあ冬なんだけれど、冬になると雪が凄いから活動と言えば雑談になってしまう。 教師陣、生徒会には「花についての有意義で生産性のある会話の元に花についての知識の向上を目指す」と、しているらしくそれが、どうしようもない園芸部が潰れない理由だろう。 園芸部員は僕を含め五人だから花壇のスペースを取り合うこともなく、そのためか特に目立った人間関係のトゲもない。 園芸部は冬でもそれ以外でも僕の精神を休める憩いの場となっていた。 大好きな桔梗を眺めていると、ふと騒がしい足音が一人分、後ろから聞こえたことを確認した僕は無意識に体をそちらに向けた。 これが物語の始まりかな。
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