行き過ぎた推測は不安を呼び寄せる

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放課後、なずがが集合場所に指定した生徒玄関には沢山の生徒がいた。生徒玄関というからには仕方ないのだろうけど、それにしても混雑してる。 おかげでなずなを探すことに十五分の時間を費やしているけど、これじゃ明らかに浪費だ。 いつもは第一校舎と第二校舎に挟まれている中庭に足を運ぶから、まさか生徒玄関がこんなに混雑してるとは思わなかった。 さすがに暑苦しいね、少し離れることにしよう。それにしても……疲れたなあ。 一生懸命上げていた目線が斜め下に下がった。当然背中が丸くなる。 甲羅みたいに重いなぁ、でもここにいるよりかはマシか。 「あっ、梗介じゃん。フフッ、どしたのそんな丸い背中して」 その声は、なずなかな。僕は目線をもう一度上げる。 「じゃあ行こっか」 「ん、おう」 ようやく出会えた……ってちょっと待て。ん、おうじゃない。 今生徒玄関を離れた僕は正面から歩いてきたなずなと出会えた。 逆に言えば今生徒玄関へ向かっていたなずなは生徒玄関から来る僕に出会った、待ち合わせ時刻から十五分は経った時間に……つまり遅刻してきたのか。 ……叱りつけたい。なずなはこういう適当な面が多々あるから困る。 もちろん文句は言わない。機嫌を悪くしても得はないしね。それになずなは適当でたまに天然、そんなキャラだからここで何か言ったらキャラを全否定してしまいそうで怖い。 「ところでさ、なずな」 「なぁにー?」 甘ったるい、耳にするには幸せ過ぎる声で返事をされた。 「その……か、楓はどこに?」 もう十年程片想い続けてる相手の名を口に出すと、僕の顔が少し熱くなる。 正直これだけの期間会ってない人のことを本当に好きなのか分からなくなっていた。 だけどまだ好きだって、楓のことが好きだって証明するには、顔が赤くなったこと、それだけで十分だ。
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