平穏って

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アタシは花が好きだからか色も好きで。 それも、日本特有の綺麗な色の呼び名が。 紫にも色々あって、赤紫や紫紺、江戸紫や梅紫…あげればキリがない種類の名前。 若紫も、そう。 5年前、初めて会った犬の若紫は既に成犬で。 お父さんが仕事で帰って来れなくなるから、ボディーガードを連れてくるって言って。 アタシは15だったけど昔から留守番に慣れてたし、近所の人も良く面倒見てくれて。 寂しくもなかったから要らなかったのに。 でもね? お父さんが連れてきた…大きなモフモフが一目で大好きになったの。 それからずっと一緒に。 若紫と名付けたのは目の色。 薄めの紫に…多めの桃色が入ったような柔らかい紫色。 不思議な目だけど綺麗で。 幼い頃から花も色も好きだったアタシが付けた名前が、若紫。 大好きな色。 『…その目…。やっぱりあなた日本人じゃないの?着物、着てるのに…』 「日本人…では無い…かな?」 『いや、聞かれても…』 「…これは着物じゃなく狩衣」 『かりぎぬ…?』 「そう」 『あ、神社の人が着てる…』 フワと若紫色の目を細めて綺麗に笑うから、思わず… 「寿?熱?」 『ち、チガイマス。それより!だからアンタ誰!』 「若紫」 『そう若紫…そうだ!若紫はどこ!?アンタまさかアタシの若紫に!』
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