平穏って

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シャクってた顎を戻して、完璧だった手も降ろし考えてみた。 あうん…… 聞いた事ある…かも。 阿吽の呼吸、って… 「阿吽丸。それが俺の真名だ」 『まな、ちゃん?』 「フ…誰それ。真の名前」 フワと笑った若紫はとても優しい笑みで、アタシには犬の若紫がよくする表情に見えて。 『若紫…?アタシ、の…』 口が勝手に呟いて…ソファから勝手に身体が起きて、若紫に手を伸ばしていた。 嬉しそうに笑った彼は、差し伸ばしたアタシの手に。 若紫色の目と、髪と同じ色の…長い睫毛を伏せて スリ…と、その頬を寄せた。 『ッ!』 その仕草は―… 『…ほんとに…若紫なのね…』 何故か… ストンと、受け入れていた。 綺麗な目を開いて、アタシの手に大きな手を重ねる。 ドキッとした。 それを凄く切なそうな顔でするから、何だかアタシまで… 「俺にこうしてくれる寿の手をずっと…包んでみたかった…。こうして寿と話したかった。犬の俺は寿に触れられても、寿を抱き締められない」 『!?』 「昔から寿は疲れてると俺を抱き締めながらよく寝落ちてた。俺が人型で抱き締められるのはその時だけだった」 『な…』 「今日もいつもの通り、ソファに運ぶつもりだったのに…この姿を見られてしまった…」 『ッ!?もしかして…見たらダメだったの?昔話みたいに消えちゃうの?』
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