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若紫が犬からヒトになったあの夜、お風呂の中で考えてた。
お父さんは神様と知り合い?
それは外れてた訳じゃなかったんだね…立派な知り合いだよ。
お父さんが人間じゃない?
それは見事に外れたよ…そんな訳なくてお父さんは当然人間。
『…人間じゃないのはアタシ』
アタシがそうなったのはアタシが食い意地張ってたから。
『な…何てカッコ悪い…』
お粗末過ぎる子供のアタシ!
『ハァ~…』
おかしなモンで…ほんとに驚いただけで済んだなんて、自分でも意外かも。
諦めと悟りの境地だね。
『あれ?でも結果的に…これで若紫は主様を庇えた訳で…ってだから違うし。アタシってば』
諦めいいんだか悪いんだか。
自分が…狛犬予備軍で長寿で。
『お父さんより確実に長生き…かぁ。それが親孝行だなんて』
自分の父親ながら…
でも…老けないなら。
…ずっとここには―…
『いつまで…』
あぁ…腐っても仕方ない!
友達ともサヨナラするのは寂しいけど…。
ずっと一緒に…若紫が一緒に
『居てくれるなら……って!?』
ザッバァ~ンッ
と、お湯を勢い良く溢れさせながら湯船から身体を起こす。
入浴中でしたもんで。
『いやいや、若だけじゃなくて主様も小狛ちゃんも千歳も楼さんも居るし!あ!ご飯食べ過ぎたかなぁ!特製ソースも最高だったしお腹ポッコリじゃん!』
全力で否定してからチャプッとお湯に戻った。
あれ?
『結局…』
和って…にぎにぎ何とかって…
『何だったんだろ?』
「寿」
『ギャッ!?』
「紅茶は金平糖が入ったヤツで良い?飴ちゃん味って大阪土産に貰ってた奇抜な」
『あ、うん。ありがと若。奇抜って…可愛いし美味しいんだよそれ~。アタシが好きな紅茶屋さんでね?サユさんが見つけてじゃなくて一々脱衣場に来るの禁止いぃ~!』
いぃ~……
「『…耳痛い…』」
とりあえず…もういいや…。
早く若紫の淹れてくれたお茶、飲みたいな。
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