890人が本棚に入れています
本棚に追加
鶴の恩返しみたいに…
人の姿を見たんだからアレとは逆だけど…
若紫は…
若紫もどこかへ行っちゃうの!?
「いや………消えない…まだ」
『……へ』
「逆に良かった。いつ人型になろうか悩んでたから」
『そ、そうですか…』
拍子抜けしたじゃん!
でも…
良かった…。
…ん?
良かった…んだよ、ね?
「人型を取らなかったのは…俺の仕えてる方と、寿の父上との約束事があったんだ」
『仕えてる?ち、父上?そんな大層な』
「寿が20才になるまでは決して人の姿を見せないように、と。それが守れて、寿も護り、事実を知った寿が俺の存在全てを…受け入れてくれたら」
若紫に包まれていた手に、また滑らかな頬の感触。
ほぁ~…基礎化粧品ナニつかってんだろって位の綺麗な肌…。
そんな現実的な事が気になってしまったのは、非現実から逃避したくなって来たから。
アタシの手にスリ寄るヒトが…
若紫色の目が
形の綺麗な唇が
また、緩やかな弧を描く。
「寿を俺のお嫁さんにして良いと、お許し頂けた」
『………』
「…寿も好きにしていいって…さっき言った」
『………やっぱり夢だ…』
「だから、好きにする」
『…日本語なのに分からない』
「俺の寿。これから一緒に」
『何も聞こえない』
「狛犬として生きていこう」
『………………はい?』
……こまいぬ?
「良かった。[はい]って言ってくれて」
『いや、違うから』
最初のコメントを投稿しよう!