平穏って

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鶴の恩返しみたいに… 人の姿を見たんだからアレとは逆だけど… 若紫は… 若紫もどこかへ行っちゃうの!? 「いや………消えない…まだ」 『……へ』 「逆に良かった。いつ人型になろうか悩んでたから」 『そ、そうですか…』 拍子抜けしたじゃん! でも… 良かった…。 …ん? 良かった…んだよ、ね? 「人型を取らなかったのは…俺の仕えてる方と、寿の父上との約束事があったんだ」 『仕えてる?ち、父上?そんな大層な』 「寿が20才になるまでは決して人の姿を見せないように、と。それが守れて、寿も護り、事実を知った寿が俺の存在全てを…受け入れてくれたら」 若紫に包まれていた手に、また滑らかな頬の感触。 ほぁ~…基礎化粧品ナニつかってんだろって位の綺麗な肌…。 そんな現実的な事が気になってしまったのは、非現実から逃避したくなって来たから。 アタシの手にスリ寄るヒトが… 若紫色の目が 形の綺麗な唇が また、緩やかな弧を描く。 「寿を俺のお嫁さんにして良いと、お許し頂けた」 『………』 「…寿も好きにしていいって…さっき言った」 『………やっぱり夢だ…』 「だから、好きにする」 『…日本語なのに分からない』 「俺の寿。これから一緒に」 『何も聞こえない』 「狛犬として生きていこう」 『………………はい?』 ……こまいぬ? 「良かった。[はい]って言ってくれて」 『いや、違うから』
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