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「ほらっゆかり! 先輩来たよ」
美咲が、私の肩を痛いくらいに叩く。
思わず、手元のパウンドケーキを落としそうになった。
ちらりと前を見ると、私の憧れの人、三木 爽介(ミキ ソウスケ)先輩が、他の男の先輩と二人で廊下を歩いて来ていた。
その瞬間、私の心臓は激しく体を打ち付ける。
じっと遠くから見ているだけで十分だった。友達との会話で現れる何気ない笑顔も、それを見れただけで私は幸せで満たされるんだ。
そんな私が、先輩の誕生日にケーキを渡すなんて愚かなこと、しても良いんだろうか。
「美咲……でも先輩はたくさん貰ってるだろうし……わたしのケーキなんか……」
汗ばむ手で、ケーキの袋を握り締める。近づいてくる先輩を感じながら、目線は手元から動かない。
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