掛け違いの釦

12/40
前へ
/40ページ
次へ
寝過ぎてけだるい身体を起こして、ふたりで外に出る 日が陰ってちょうどいい気温の中、相変わらずの距離感で他人行儀に駅までの道のりを歩く 言葉数は少なくて 飯食ってちょっと散歩しながら、穏やかに過ぎる時間 部屋に戻って、昨日借りた残りのDVDをまた見て。 なんてことない、休日。 でもここに美紗緒がいるから、安心してた いや、油断してた 「そろそろ」 そう控え目に話した、美紗緒の声が全部台無しになったような わびしい気持ちになって。 「あ、そう」 帰んの?って 言いそうになった そんなのみっともない 駅まで送り届けて「じゃあ」と、じゃあ、っていつ? ああ、明日会社にいきゃいるか、って 静まりかえった部屋に戻った瞬間。 味気ない部屋に、がっくりと肩を落とした なんだろう、この空虚感は。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9780人が本棚に入れています
本棚に追加