大きな世界の小さなお話

5/5
前へ
/5ページ
次へ
 ――五年後。  公園を子供達が駆け回る。商店街は商人達で賑わっている。復興することに成功した国は以前にも増して活気で溢れ返っていた。  あの時。  俺が彼女にかけた魔法は、多重人格者の治療などに使われる、二つの精神を混ぜ合わせ、境界を曖昧にし、共存するための魔法だ。  その名を【調和】という。  正直、上手くいくかどうかは分からなかった。しかしどうやら彼女の意志の方が魔王の意識よりも強かったようで、俺の思惑通り魔王の意識を彼女の心の奥深くに押さえ込むことに成功した。  まあ、魔力はどうすることもできなかったし、時々暴走することはあるけれど。それでも俺は、十分成功だと思う。  誰の心の中にでも、魔王はいる。  俺の親友の中にも邪心と言う名の魔王がいた。彼は自分の中の魔王に屈してしまった。   自分の中にいる魔王に打ち勝てるか、否か。それによってその人の人生の善し悪しが決まるのだと――  俺は、思う。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加