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所が、彼はそっちへは向かわない。入ってすぐの、エントランスにあるソファに、腰を降ろしてしまったのだ。
「はあ・・・」
どっぷりとソファに背を凭れ、天井を仰いだ直哉は、しんどそうにため息をついている。
余程疲れているのだろう。スーツ姿にキャリーバック。出張帰りのサラリーマンに、よく見られるスタイルで、その帰りのようだ。
けれども、それなら尚の事、すぐにでも我が家へと帰ればいいだけのはず。
なのに、彼はそうしようとはしない。ここに腰を沈ませ根付いてしまっている。まるで帰るのを躊躇ってるかのように・・・。
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