第1話 真紅のオーヴァーチュア

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所が、彼はそっちへは向かわない。入ってすぐの、エントランスにあるソファに、腰を降ろしてしまったのだ。 「はあ・・・」 どっぷりとソファに背を凭れ、天井を仰いだ直哉は、しんどそうにため息をついている。 余程疲れているのだろう。スーツ姿にキャリーバック。出張帰りのサラリーマンに、よく見られるスタイルで、その帰りのようだ。 けれども、それなら尚の事、すぐにでも我が家へと帰ればいいだけのはず。 なのに、彼はそうしようとはしない。ここに腰を沈ませ根付いてしまっている。まるで帰るのを躊躇ってるかのように・・・。
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