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「橘……お前、意外に重いね。」
「ひどい、降ろして、降ろして」
床に足が付いてほっとしていると、先生が私の頭にポンと手を乗せ「嘘だよ、重くない。」と言って先を歩き始めた。
先生の後をついて、リビングに入る。
先生は直接キッチンに入り鍋をかき混ぜている。
「先生…お料理するんですね。何でも出来るって、ちょっと嫌味?」
「何、言ってんだよ。食わしてやらねーぞ。」
そばに行って鍋を覗き込む、どうやらトマトソースのようだ。
「お昼はスパゲティですか?」
「ま、定番ってとこ? これはこのまま少し煮込んどくから、さっあっち行って」
リュックと着替えの入った紙袋をソファのそばの床に置き、「あっ」と思い出す。
「先生、小学生男子から、女子高生に戻りたいんですけど、着替える所貸してもらえますか?」
「なんだ、着替えちゃうの?可愛いのに。」
先生がキッチンから、コップとペットボトルのお茶を持ってきながら、私の方をニヤッと見た。
「へー先生あっちの趣味の人なんだ…あ、だから女嫌い?」
さっきの妄想を再燃させて、冗談でそう言うと、バコンと2Lのペットボトルの底が頭に乗っかって来た。
「痛!」
「お前ってよっぽどお仕置きされたいんじゃない?」
ペットボトルとコップをローテーブルに置き、尻込みする私の首に腕を回しヘッドロックを掛ける。
「うっ…く…く、苦しい…助けて…」
先生の腕に両手を掛け、外そうとしていると、先生の頭が耳元に降りて来る。
「俺の言う事、聞ける?」
「はい…ききますから…た、たすけて…」
耳に直接囁かれる攻撃の方が、ヘッドロックより数倍威力がある。
ぼっと顔に火が付いたようになり、逃れたい一心で、はいと言ってしまう。
「忘れんなよ。」
私を放しながらそう囁いた先生の顔は、またしても悪魔の笑みを浮かべていた。
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