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「中学に入ったら、
お兄ちゃんが大学に入って、それから家を出て
…お母さんはいつも、頭が痛いって寝てて
…お父さんはお店が大変で家にあまり居なくて……
私は友達のちいちゃんにすっかり寄り掛かってしまってた。
毎晩電話して、理屈っぽい話をして、学校でもべったりで。
私は自分の好きなものに囲まれて、親友のちいちゃんがいれば、それだけで十分で、ほかのクラスメートとかどうでも良かった。
まるで、関心がなかった。
それで……ちいちゃんが言ったんだ。
『ユイ トダケジャナクテ ホカノコトモ ナカヨクシタイ』
ちいちゃんが重荷に感じてるって気が付いたら、もうだめだった。
本当の私はプライドだけは天より高く、周りの人間を見下して、『私は選ばれた人間だ』と考えるようなやつだったから。
こんな情けない自分、ホントに生きてる価値無いと思った、
キッチンの食器棚の引き出しに、いつもお母さんの薬がいっぱい入ってるから夜中にそれを全部飲んだんだ。
殆どは精神安定剤だったみたい。
朝になっても起きて来ない私を起しに来たお母さんが、救急車を呼んだんだって。
胃の洗浄とかして、少し入院した。
お母さんが、助けたって聞いて嬉しかった。
生むんじゃなかったって言われたのに、生かしてくれたから…」
言葉にする事がどんなに辛いかと容易に想像出来るのに、彼女はぽつぽつと
時々震えながら、話しきった。
ごめんね…と思う。
彼女の肩に腕を回し、彼女の頭を自分の方に寄り掛からせた。
「ありがとう…」そう言う。
決して曝したく無かった自分の傷を、痛みも全て明け渡してくれた。
満足感が心の中を支配する。
静かにすすり泣きする彼女に、なんて残酷な男だ俺は、と思うのに。
大丈夫、俺が君の欲しいものみんなあげる。
小さな頭に頬を摺り寄せて、自分の執着の強さに溜め息を吐く。
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