先生と子猫な私

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   ほっぺたが痛い。  誰かが摘んでムニムニしてるみたいだ。  あーもう眠いんだってば……ん?  学校は?今何時?  目を開ける。  視界いっぱいに先生のご機嫌な顔……か・お・?  「よく寝てたね、危ないよ?ほら、触られ放題だ…」  再びムニムニと摘まれ遊ばれるほっぺた。  「も――――!やめーい!」  首を振り、手を払い、自分の姿勢に気が付く。  すっかり先生に上半身を預けた格好で寝ていた。  あたふたと体を起し先生から離れる。  「残念、気持ちよかったのに。」  あーもうそう言うことをさらっと冗談で言わないで欲しい。  何だか思い出してしまった、頭を撫でられて凄く気持ちが良くて、そう言えば  泣いていたんだった。  先生の歌を聴いて、  いっぱい大切だって言って貰って。  すっかり先生に甘えて寝ちゃったなんて…    「あ、の、すみません、寄り掛かって寝ちゃって…私なんかほっぽっておいてくれればよかったのに。」  「そんな、まさか。せっかく子猫が懐いて、そばにくっ付いて寝たって言うのに。」  「はあ…」  先生が立ち上がってテーブルの上にまだあった、お皿を片付けようとしている。  「先生!待って!私、食べ掛けだった!食べるから、お願い!」  先生が持つお皿を戻して貰おうと、先生の手首を両手で引き止める。  「もう、おいしくないよ。お腹空いてたら、また作ってあげるから。」  「ダメ!捨てないで!せっかく作ってくれたのに、やだ!食べるから、置いて!」  必死過ぎて、自分でも可笑しいと思うけど、どうしても捨てて欲しく無かった。  先生がふっと溜め息を吐いて苦笑する。  「そんな、泣くこと無いのに。  わかったから、ほら。」  先生はお皿を私の前に置くと、手のひらで私の目元を拭った。  「へへ、いただきます。」    もう一度両手を合わせてから、冷たくなって、歯ごたえも今一になったスパゲティを頬張った。  その味を絶対忘れない。
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