先生と子猫な私

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その日は夕方まで先生のマンションで過ごした。  先生が植木鉢に水遣りするのを手伝ったり、水槽の中のカメや魚に餌を上げるのを観察する。  「その魚は熱帯魚ですか?」  「うん、アフリカン・ランプアイ、グッピーの仲間だよ。」  「グッピーって?」  「メダカの一種かな、強くて飼いやすいんだ。  あと、藻の陰に隠れてエビが居るんだけど見える?  お掃除屋さんなんだよ。」  「……あ!いた!えびちゃん発見!」       嬉しくて先生を見上げると、すぐ傍で私を見下ろす先生と目が合ってしまい、  恥ずかしくてまた、水槽に視線を戻す。  背中に先生の体温をが伝わって来そうなほど近くて、その上先生の両手が私を挟んで水槽の載るスチール棚の横棒を掴む。  閉じ込められちゃった…と思ったら、頭の上に先生の顎がのっかって来た。    「水槽のガラスにくっ付いてるのがやっぱり、お掃除屋さんでタニシ。  魚の数を減らして、ビオトープみたいにしてるんだ。  あまり世話を焼いてる暇がなくてね。」  なんて、平然と喋ってるけど、こっちは頭に声が直接響いて来るし、先生が動くと背中に触れてしまうし、かなりパニック状態で、熱が出そうなんですけど…  「ん?どうしたの?おとなしいね。」    って、耳のそばで喋らないで~!  絶対わざとでしょ!    「あ、耳…真っ赤だ。」    だ~か~ら~!  もう、このドS先生、どうにかして。  俯いて固まっていたら、先生の手の檻が放れた、と思いきや、私のお腹の前で両手が交差する。  後ろから、抱きしめられてしまってる。    し、心臓が、びっくりするくらい早く打ってて、私絶対このまま死んじゃうと思う。    「は、離してください…」  「ヤダ…」  ぴくっ! 耳に直接囁かれて、電気信号が走る。  た、たすけて…  「すっごい気持ちいいんだけど。」  耳から顎一帯を頬ずりされて、もう降参です。  「あ、いじめすぎちゃった。  泣かないで…ごめん。」    そんなこと言って先生、そんな嬉しそうに笑ってたら意味無いって。  すっかり力の抜けた私を抱きかかえた先生は、ちょっともうし訳無さそうにしてからこう言った。    「やっぱり、URL教えて。」
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