先生と子猫な私

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   東の空が何層にも色分けされたシャーベットみたいに、ブル―から薄紫そして薄紅色のグラデーションをしていて、ふっと振り向くと建物の切れ間から覗く西の空には、隠れていてもオレンジ色の眩い光で雲を染めていて、夕陽が沈みかけているのが分かる。  毎日違っている。同じ夕空なんか見たことない。  あっ、今日はこんな色、今日の夕陽はすごい大きい、東と西でこんなに色が違うんだ、なんて毎日思いながら眺める。     綺麗な空を見て、きれいだなって思える自分を毎日確認している。    そうしないと、毎日少しづつ心が死んで行くような気がしてた、昔の名残。  地下の駐車場まで降りて先生の車で送って貰う途中、「寄り道していい?」と言われて入って行ったのは、市民ホールや、体育館、競技場に市役所と市の施設が集まっている一帯。  そこの一角にある公園の駐車場。  昼間は子供が遊んで賑やかな公園も、今はちらほらと通り抜けて行く人が見えるだけだ。  車のフロントガラスから見える空の色を眺めて、先生が醸し出す陰鬱な空気を知らない振りをしていた。  先生は駐車した時の姿勢のまま、ハンドルに両手を掛けていた。 視線だけ先生に向けると、ハンドルに額をつけて溜め息を吐く姿が目に入る。    「ごめん、自己嫌悪で、言葉が出なかった。」    何も言わずに先生を見る。  こう言う先生を知ってる。  そう思う。  
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