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「君に無理強いして、嘘を吐かせて、隠れるような真似をさせて。
本当は、同級生達と遊園地でもどこでも行って楽しんで来た方がずっと良いのに、そう言ってあげなきゃいけないのに、それも言えない。
挙げ句、君に当たった。情けなくて吐き気がする。」
「先生、『だから愛しい』でしょ?私に言っといて。自分は忘れちゃうんだ。」
「…………」
先生が顔を上げて吃驚したように私を見る。
そして、左手をゆっくりと私に向かって伸ばすと頬を包む。
「本当に誰にも渡したく無い。
醜い独占欲の塊だ。
自分自身を明け渡す覚悟なんて何一つ無いのに。
そんな一方的な独善的な俺でもそう言える?
もう、嫌になったんじゃない?」
先生にはやっぱり、抜けない棘が刺さってる。
逆撫でされるとずきずきと痛むような。
私にも刺さってた。
お母さんが、自分を守っていた棘なんだと思う。
お母さんの棘に刺された私は、まだその傷が痛むけど、棘自体は抜けたのかも知れない。
先生が抜いてくれたのかも知れない。
私も先生の痛みを和らげたい。
私の出来ることなんて、無いかも知れないけど……
「先生の事知りたいけど、先生が話せる事だけでいい。
それに、先生と一緒にいられるなら何でもできるよ。
だから、嘘もこのカッコも自分がしたくてしてるんだけど。
無理強いなんて、されてないし。
先生の猫になるって自分で決めたんだし。
ランドもホントにわざわざ付き合いで、疲れに行きたく無い。
自己中なんだよ。」
先生の手がゆっくり、でもずっと私の頬を撫で続けているので、先生の、辛さも寂しさもみんな流れ込んでくるような気がして、切なくなって鼻の奥がツーンとした。
「そんな顔して涙ぐんじゃだめだよ、ホント俺通報されちゃうから。
小学生の男の子、襲ってる変質者がいますって。」
「また、先生そんな冗談ばっかり言って~」
「それがさ、君のその格好、ちょっとやばい位似合ってて、すっごく可愛い男の子が……痛!」
先生の手の甲を思い切り抓ってやった。
それから、先生を外に出して、目隠ししてもらい、女の子でいるより襲われそうだと言う小学生男子ルックから、どこにでもいる普通の女の子に着替える。
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