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『先生の唇が私の口を塞ぐ。
ゾクっとして、体に力が入る。
頭の後ろを先生の手が支えていて、逃げられない。
ギュッと引き結んだ私の唇を、からかうように、いたぶるように先生の唇が弄んでいく。
その度に体がびくっと震え、次第に強張った体が溶けて行くような錯覚に陥る。
力の抜けた下唇に甘噛みされて、背筋にビビッと電気が走る。』
ここまでケータイに打ち込んで、手が止まる。
この先どうなるんだろう、いまいち分からない。
ここまでだって、恋愛小説の受け売りだし。
ちょっとだけ、車の中で襲われて感じた実体験を入れてあるけど。
や、あれは、うん、やっぱり自分で体験しないと分らないよね。
昨日、先生はあんなこと言って脅かした癖に、実際はほんのちょっと触れ合って、ちゅっと音をさせてやめてしまった。
「やめた、やっぱりお前には早いわ。」
「え?じゃあ彼女っていうのも……」
「変わらないんでしょ?橘の考えでは、それでいいんじゃない?」
「先生が彼女さんにしたいことはじゃあ…どう…」
「大丈夫、橘、お前いじめて楽しむから。」
「…!う…あ…う……」
それって彼女と言えるのでしょうか?
「それとも、キスして欲しい?
遠慮しなくていいよ、お前の頼みなら喜んでしてあげる。」
ガ、ガーン!
つまり、頼まないとして貰えないってことですか?
そ、そんな、出来る訳ないじゃないですか~。泣きますよ~。
先生が『好きだよ』と言ってくれた事さえ、何だか本当の事なのか怪しくなって来る。
「で、でも彼女だって、私が思って喜んでるのはいいんですか?」
「くれぐれも秘密でお願いしますよ。
彼女さん。」
わ、わあ…先生の彼女…嬉しい。きゃ、彼女?キャーどうしよう、ホント?
「橘、だから、全部顔に出てるから。その顔、学校でしたらアウトだからな!彼女、剥奪するから。」
そんな、金メダルみたいに取り上げたり出来るんですか?
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