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手元のケータイ画面に意識を戻す。
こんなキス知らない。
私が知ってるのは、もっと淡くて、あっという間に消えてしまいそうな、そんなキス。
でも、確かに先生からもらったんだ。
先生の唇が触れた瞬間、ドキンと心臓が大きく鳴った。
すぐ離れてしまったけれど。
私の初めてのキスだった。
こんな嘘消そう。
クリアボタンを連打して妄想の塊を消す。
そうそう、先生が見ちゃうかも知れないのにこんなの無理無理。
ふと気づくとメールが来ていた。
受信ボックスを開くと、伊織だった。
あれ?ランドの件、断ったよね?
なんだろ?
>重要な話がある。
近くの公園まで、出て来れるか?
こんな言い方するやつじゃないんだけどな。
えーっと今2時だから…
『2時半頃なら行けるよ。』
送信と。
伊織から『待ってる』と返信が、あった。
今日は朝からだらだらして着替えもしないでスウェットのままだったので、レギンスとチュニックで簡単に着替える。
チラッと鏡を見て、ま、いいやと家を出る。
ゴールデンウィークの真っ只中、近所の小さな公園だけど、小学生が何人かで遊んでいた。
伊織の姿はすぐ目に入った。公園入口そばの木の下に立っている。
上下、学校ジャージで、帰って来たばかりなのかも知れない。
その姿で思い出した。
「あれ?関東大会の予選中じゃなかった?」
「午前中で、皆、終わった。昨日、今日は個人戦だったけど。」
そうか、これで個人戦は終わりってことか。
まだ1年だもん、個人戦に出るだけ凄いのかも。
「話って?」
「落ち着いて話せる場所、いかないか?ここ、結構人居るし。」
「人に聴かれたらまずい話?」
「うん、まあ。」
「じゃあ、一番近くて人が居ないのはうちだよね?」
「いいの?」
「今更だよね、さんざん遊びに来てたくせに。」
「そりゃ、おまえ、零士さんいた時だろ?」
「ゲームやろうぜって、コテンパンに負かされるの分ってて、よくやった
よね。」
「勝てるはずないよな6っこ上だっけ?」
そんな話をしながら私の家まで歩いて行く。
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