先生の秘密の彼女

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 「や、まあ。    地元で男連れで歩いてると、うちの親にご注進するおばちゃんとか居そうだから、一応変装…」  「お前さあ、そいつ信用できんのかよ、からかわれてるとか、遊ばれてるとか、お前が好きだって言ったって、そいつはお前のことなんか何とも思ってないか、良くて妹とか、せいぜいペットとか、悪くすりゃお前使って何か悪い事考えてたりしたらどーすんだよ!」  「悪い事って、それはないから。」  その前のフレーズは当たり過ぎてて怖い位だけど。    「根拠は。」    「は?」  「悪い奴じゃないってお前が言う、その根拠はどこにあるんだ?って聞いてんの!  どこのどいつで、何してるやつかとか全部知ってんのかよ。」  「それは大丈夫。全部知ってるから。」  「嘘かもしんねーじゃねーか。」    「伊織が信じなくても私は知ってるもの。」  「おやじさんに言ってもいいのかよ。」  「誰にも言わないって、いったじゃん!」  「そんなの俺が納得できたらだよ。  だいち、今までまるで関心が無かったのに、いきなり好きなやつって、おかしいだろ?どう考えても。」  簡単には引き下がりそうも無い。  下手な嘘ついても絶対見破られちゃうし…  こういう時はできるだけ本当の事を言うのがベストだ、とミステリー小説が言ってる。    「ほんとに内緒だかんね。  初めてあったのは2年前の春休みなんだ。  O駅のバスデッキで独りで弾き語りしてた。」  途端に伊織は複雑な顔をし始める。  あの日、伊織は私の母に呼びつけられ問い正されたのだ。  娘が自殺未遂を犯した原因を知ってるんじゃないか?と。  「柚衣はいじめられてたんじゃないの?  もしかしてあなたはいじめてなかった?」と。  入院してる病院にお見舞いに来てくれて、話してくれた。  「おばさんに怒られた。  もし、俺のせいだったら、ほんとにごめん。」  と、伊織は泣きながら謝ってくれた。  伊織のせいじゃないよ、と言っても、泣いてて「嘘吐くなよ」と言うばかりで聞いてくれなかった。   あの春休みにカウンセリングを受けてた事も知ってる。  だから、未だに私の事に責任を感じているのかも知れない。  感じなくていいのに。    
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