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「そうじゃん!
部内恋愛禁止だからって、告白断って、じゃあマネ止めるって言ったら、それは困るって、どんだけ卑劣なんだよ!
好きも嫌いも言ってやらないで、マネだけ止められると困るからって。
極悪非道もいいとこだろ!」
頭に血が昇っているので言わなくてもいい事まで言ってしまう。
全然関係ないことを持ち出して自分への攻撃をすり替える。
卑怯だと分ってても止まらない。
先生が私なんかに本気になるはずがないって、ここまではっきり言われたショックで、もうズタズタだった。
その私に伊織は情け容赦なく次の攻撃を仕掛ける。
「へえー、卑劣で極悪非道か、そこまで言われたら俺も遠慮しねーよ。
お前と会ってたあの男、どうせミュージシャンとかドラッグやってたり、ろくでもない奴にきまってるかんな。
しっぽ掴んで、この俺がおやじさんにご注進してやるよ!」
「なんで伊織がそこまでムキになるのか分んない!
私のことなんかほっとけばいいじゃん。」
「ほっとければ苦労はしねーよ…
今まで、男に興味なんてなさそうだったのに…。
くそ!
なんで突然現れたどこかの馬の骨に掻っ攫われなきゃいけねんだよ。
俺のだったのに…」
そう言って睨む伊織の目が赤く潤んでいる。
まさか?
嘘だよね?
伊織は、ガタンと音をたてて立ち上がると荷物を持って何も言わずに玄関から出て行った。
違うよね?
考え過ぎだよね?
自意識過剰なんだから。
私の頭の中をずっとそんな言葉が駆け巡る。
ありえないから。
伊織だよ?
小学校から腐れ縁の。
ずっと私をいじめて喜んでた。
友達のちいちゃんがこっそり耳打ちした言葉を思い出す。
『ねえ、伊織君って、絶対柚衣のこと好きだよね。
だって言うじゃない。
男は好きな子ほどいじめて喜ぶって。
幼稚だよねー。』
ちいちゃん、ほんとかも。
どうしたらいい?
私ずっと傷つけてたのかも知れない。
私が自分の事しか考えられないバカでダメなやつだから。
怖いよ。
どうしよう。
怖いよ。
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