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昼休みに伊織のクラスまで行って呼び出す。
伊織は仏頂面で出て来ると
「何だよ。」
とそっぽを向いたまま、まるで何か文句あんのかよとでも言いたそうだ。
「テニス部のマネージャーの件,謝りに来た。」
それを聞いた途端慌てだし、「ちょっと待てどっか行こうぜ、ああ屋上でいいや」と言いながら私の腕を掴んでがんがん先を行く。
なんか、前にもこんなことあったよな~と考えながら伊織に引きずられ階段を昇り屋上に出た。
さやか先輩が言ってたとおり、屋上は昼休みを過ごす生徒たちでそれなりににぎわっている。
伊織は四角いコンクリートの出入り口の裏側に行きそこに座り込んだ。
その辺りは狭くなっていて、他の生徒は居なかった。
「ここ、座れよ。」
座る前にと思って、頭を下げた。
「昨日、酷い言い方した。
ごめん。
マネ―ジャーの友達から、聞いたんだ。
早速マネージャーとちゃんと話したって。」
「その話はいいよ、だから座れって。」
隣に少し間を空けて座りながら続ける。
「お礼を言われちゃったんだ。
私はただ伊織に言い返したかっただけなのに。」
「その件は頼むからお終いにしてくれ。
俺が適当に逃げた返事をしたのが悪かったんだから。
マネージャーに辞められると困るって、それしか考えて無かった。
すっごく気が付いて、テニスもよく知ってるからスコア付けたりとか、もう皆が頼りきってて。」
「辞めないって聞いたよ。
伊織のことじわじわ攻めるつもりじゃないかな?」
「は?
あー辞めないとは言ってたけど。
一応断ったからなあ、そのうちほかのやつに気が行くよ。」
「それから。
私は伊織のおもちゃとかじゃないから、俺のもの呼ばわりはやめて。
友達だと思ってるから。」
伊織がぱっとこっちを向いて私を凝視する。
「わかった。
これからも友達でよろしく。
でも、あの正体不明の男、なんて言っても探してやるからな!
俺が安心できるまで!」
「もし、正体が分かったら伊織も安心するよ。」
「は?」
大きく深呼吸して空を見上げる。
綺麗な青空が私の中にまで沁み渡って来る。
もう、怖くないよ……先生。
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